Uの忘れ物

忘れ物をしない為に 振り返ることが 今の俺にできるたった1つのこと

1000円札

「男性の方!ここでパッとお札出せる人…

めっちゃ格好いいと思います!」

 

肩で息をし、

やりきった清々しい立ち振る舞いで、

マイク越しにそう言い放った

 

彼は

琉球、沖縄から来た

大道芸人、名を ツバサ というそうだ

 

※今回やや長文です(すみません

 

足取り重く

造幣局に桜を見に来たのだが、

何やら人だかりが

 

 

何気なく足を止めた

 

彼はとても輝いて見えた

観る人、

そして自分が楽しめるフィールドを

手探りで構築していった

 

彼はインターバル(次のパフォーマンスに移る準備中)自己紹介や、どうして来たかなど、

自分のことを語っていた

 

彼は

技と身体とスピリットだけで、

単身で関西に乗り込んで来て

ノーギャラだという

沖縄から関西まで片道

35000ほどかかるそうで、

このままだと家に帰れないと(笑

 

そして、

 

最後に

 

「お金ください!!」

 

とても潔くて、

とても素敵な人だなぁ と思った

 

そして、

 

「男性の方!ここでパッとお札出せる人…
めっちゃ格好いいと思います!」

 

と付け加えた

 

俺は

1000円を取り出し

彼のド派手でデカ過ぎる赤のガマ口財布に

その1000円を入れて、握手をした

 

彼はとても素敵な笑顔を見せてくれた

 

あっ…

そういえば…

と、ふと思い出した

 

中学3年の夏休み

俺は、

地元、岡山から

往復5日かけて、

京都まで自転車で行ったことがある

 

忘れもしない…

 

夜明け前、

うっすらと太陽が昇り、

木々にはうっすら朝霜

少し肌寒かったように思う

 

俺は道に迷って

右往左往していた

 

すると、

40代くらいの夫婦が俺を横切っていった

 

「あの〜…」

 

 

振り返るとさっき

俺を横切っていった夫婦だった

 

「こんな時間にどうしたの?

何か困っているの?」と、

とても心配そうな顔だった

 

「道に迷ってしまって

京都へ行きたいのですが、

どちらに走ればよいでしょうか」

 

「えっ!?

自転車で…

貴方、どこから…」

 

「岡山です」

 

「えっ!?

貴方…おいくつなの?」

 

「中3です!(笑」

 

そんな会話を交わし、

なぜ京都に行こうとしたのか

なぜ自転車だったのか

色々な話をして

少し仲良くなった

 

そのご夫婦はとても

親切で、

わざわざ地図を書いてくれた

 

そして、

別れ際

 

くしゃっ…

 

 

握手をした手から

紙の感触と音がした

 

「持って行きなさい」

 

「えっ…」

 

見ると

くしゃっとなってしまった

1000円札だった

 

!?

 

俺は慌てて

皺を綺麗に伸ばし

 

「ダメです!

こんな大金!

受け取れません」

 

あり得ない

会って間もない

得体の知れない

イカれた厨三病野郎だぞ

俺は困惑していた

 

「但し…」

と、口調が一気に強くなった

かと思えば

とても優しい顔で

 

「君の目的を達成し、

必ず無事に家まで帰りなさい」

 

 

1000円札を綺麗に折りたたみ、

そっと俺の手に握らせ、

優しく俺の手を包み込んでくれた

 

「約束できるね?」

 

正直、

怖かった

不安だった

成し遂げられるのか

逃げたかった

帰りたかった

でも、

進むことも

戻ることもできなくて

すれ違う大人は皆

俺など視界に入らないかのようだった

俺の存在などないかのように…

 

その手は…

少しごつごつしてて、

ざらざらしてて

固くて、でも、

本当に優しくて

それでいて

本当に暖かかった

 

息苦しくて

歯がガタガタなって

瞬きできなくて

何も言葉に出来なくて

でも、

俺は懸命に首を縦に振った

 

「は…ぃ…

やぐ…ぞ、ぐ…

じま…っ…

やぐぞぐじまず」

 

全力だった

 

不思議と

いや、

当然だろう

恐怖も不安もなくなった

 

行ける

 

いや、

行くしかない

それ以外に道はない

 

俺は深く何度も頭を下げて

ご夫婦とお別れをした

 

そして、

地図を片手に

自転車を漕いだ

 

結局

俺は

その1000円札を使えなかった

使える訳がない

もはやその

1000円札は俺にとって

お金ではなくなっていた

 

俺にとってそれは

 

お守り

 

くじけそうになったら

俺はその1000円札を見た

 

今でも、

その1000円札は

フォトアルバムに挟んでいる

 

たかが1000円

 

されど、1000円。

 

1000円で何ができる?

 

その手にした

1000円は何に消えていく

 

その1000円は

何を与えてくれる

 

俺は

1000円を

あの時のご夫婦のように、

あそこまで

価値あるものに出来たことはない

これからもできないだろう

だけど、

できたらどれだけ素敵だろうかと、

思う

素敵なお金の使い方だ

 

さて、

本題に入るが、

俺も決して

裕福ではない

 

勢いで

1000円を出した俺の財布は空っぽだ

 

桜まつりの会場には

出店がいっぱい

美味しいそうな匂いもいっぱい

が、とても手が出ない

 

唯一食べれる物(金額的に)発見!

 

1個200円の いちご大福!

彼女も

いちご大福好きだったなぁと思いながら

 

まぁ、

あのまま何もしなかったら、

適当に美味しいもの食べて

胃袋に入っただけで終わってたろうし

 

それを

考えたら

素敵な笑顔も見れて、

家に帰る為のタシ?になって

少しでも力になれたなら

その方がいい

 

後、

残金ヤバくなかったら

いちご大福 買ってなかったと思う

結構美味かった!

 

し、まぁ

 

えっかな!(笑

 

桜見ながら

いちご大福 最高って話!