Uの忘れ物

忘れ物をしない為に 振り返ることが 今の俺にできるたった1つのこと

表と裏

「ほんと仕事丁寧やな」

 

仕事に慣れてきた頃だった

今までも

何度もそう言われてきた

その度に俺はこう答えた

 

「そんなことないですよ、

まだまだ出来ないことばかりですから」

 

そう言いながら

内心、その言葉に歓びを感じ、

誇りを持っていた

 

もっと丁寧に仕事をしよう

もっと役に立てるように

もっと仕事の質を上げよう

 

前向きに

やりがいを持って仕事に打ち込んだ

 

しかし、

俺は気付いてしまった

 

ある日、

先輩から

また

 

「ほんと仕事丁寧やな」

 

と言われた

 

俺は、

 

「まだまだもっと質を高め…」

 

被せるように先輩は言った

 

「ホントシゴトテイネイヤナ」

 

 

 

 

 

俺は全てを悟った

 

 

 

 

 

「仕事丁寧やな」

 

 

それは のろま という意味だ

 

どのコンサルタント

セミナーでも

自己啓発本にも

 

質よりスピード

 

と謳われている

 

このご時世

 

俺は完璧に現代という濁流を逆行していた

 

 

ほんと救いようがない

 

馬鹿にされた言葉に歓びを感じ

誇りを持って

 

もっと丁寧に…

役に立てるように…

仕事の質をもっと…

 

情けない話だ

 

 

時折その時のことを思い出す

 

言の葉には

 

 

 

 

が、ある

 

と、いうこと